新しい月


新月
新しい月が始まることは、どこか新鮮な気持ちになる。
心のどこかで、この神無月が訪れるのを待っていた。




運動会の後、帰省する予定で打ち上げもキャンセルしていたのに、
1日中日光を浴びたせいか、くったりと眠ってしまって、真夜中に目覚める。




階段を降り、いつもベランダから見ている木々の下にいって、新月に祈る。
下から見上げる4階のわたしの家のあかり。
誰か他の人の家のように思える。
わたしは、あの場所に暮らして、この木のてっぺんを見ているのだ、と下から見上げる。




数日前からたちこめる金木犀の匂い。
9月後半は、THE BOOMを聴いていた。
大学生の頃から、この季節はブーム。
中央線、星のラブレター、そしてからたち野道。
その頃からずっと好きな曲たち。
それぞれに、それぞれの思い出がある曲たち。




運動会。
近隣の学校が延期する中、水はけのよい学校だからこそ、実施が叶う。
朝から、ぞうきんで運動場の水たまりと格闘。
そういえば、2009年、初めてこの学校で運動会を迎えた朝も、こうして作業をして、運動会を実施したのだった。
長いこと、この学校にいるな、と思う。
午前は曇り、午後からは青空も見えて、運動会日和だった。
今年は担任学級がない初めての運動会で、なんだか、ずっと不思議な心地。
中1、中3になった卒業生が見にきて、声をかけてくれる。
彼らとつくった組体操を含むパフォーマンスを思い出しつつ、
運動会という行事を冷静に考える1日。
演技や競技、応援ではこどもたちのいい表情や音楽、スポーツ、観戦を楽しむがたくさん見られてうれしく、
これはこれでいいものだ、と思う。
行事は、個人、集団の郷愁に支えられている部分も大いにあるな、とも思う。
文化とはそういうものかな。
6年生が旗を使った演技だったので、旗についても色々考えた。
旗にはロマンやドラマがあると思うし、それゆえの葛藤があるのだな、と思う。
コクリコ坂を思い出す。
ラジオ体操を、とびきり丁寧にする。
誰にも見られていないラジオ体操を、とびきり丁寧に、自分の体と見上げた青空のためにするのが好き。
ジャンプの着地、呼吸の手を下ろすタイミングを、音楽とぴたりと合わせるのが、昔からのこだわり。




明日は早起きして、実家に戻ろう。
実る稲の甘い香りと金木犀の香りのたちこめる秋の丹後路を走るのが楽しみ。
前回の帰省とは、また違う気持ちで歩く散歩道に、伝えないといけないことがある気もする。



昨日の朝の夢は、美しかった。






「赤い実にくちびる染めて 
 空を見上げる
 これ以上つらい日がきませんようにと
 飛び石踏んだ」

 『からたち野道』作詞:宮沢和史