Be patient.

フィリピンで最初に響いた言葉は、"Be Patient"だった。
23時半に到着したが、大雨とそれにともなう渋滞で、なかなか迎えは到着しなかった。
スタッフのアイシーが、ずっと messengerで私を励ましてくれた。

"Be patient."

必ず到着するから、辛抱強く待って、と。


"Be patient." とは、なんて素晴らしい言葉だろうと私は思った。
そして、そう言ってくれる人がいる、ということが、どれほど励みになるだろう、と。
私は、その言葉を、噛み締め、涙ぐみながら、守られるように待ち続けた。
2時間と少しの間、待ち続けられたのは、彼女のその言葉があったから。
印象的な旅のはじまりだった。



私も、誰かに、"Be patient."と言う役目を担う日も来るだろう。
あるいは、自分で自分をそう励まさなければいけない日が続くかもしれない。
これまでも、そうであったように。


雨のマニラで聴いた言葉のあたたかさと希望を、思い出す日が、これから幾度もあるだろうと思う。





熱さを帯びた手がかすかに痛む。
精神状態は良好なのに、体調がまだすっきりせず食欲は無くなっていく一方で、
アンバランスに倒れこむ。
とにかく眠りたいのに、眠ると悪い夢を見てしまう。


フィリピン滞在の後半、体調は快復したのに、夜に夢にうなされる日々が続いた。
帰国しても悪い夢を毎晩見てしまう。
これは、嘘だよ、大丈夫だよ、と、
夢と現実の隙間で必死に自分に言いながら、何度も目覚める。
今朝は、母からもらった、小さなダイヤのネックレスのダイヤだけ、くりぬかれてしまう夢。
壊れたものは、元には戻らなかった。




今日は、朝から宇治市のある小学校で90分の校内研修を担当した。
テーマは、国語科の「書く」領域。

書き手を育てるためのアプローチを、事例をもとにいろいろ紹介したり、ワークをしたり・・・。
卒業随筆の実践を紹介し、先生たちとも、「教師人生におけるターニングポイント」を探るワークも。
語り合う姿がすてきだった。
私が研修をつくると、こういうふうになるんだな、ということも、
つくりながら見えてくる。
こどもの場合と本当に同じで、「出会い直す」場をつくりたい、ということにつきる。
自分と、他者と、世界と。



「書く」は、私の人生の大きなテーマなので、実践を積み重ねていきたいと思っている。
書くことで、生きられる「生」もある。
私は、それを信じている。
だから、今、こうして、文章を書いている。
今日、体調不良で、つっぷして眠ってしまっていたら、生きられなかった生。
もちろん、そういう日もあるわけだけれど。


研修の最後に教頭先生が、「ぼくは、書くこと、話すこと、表現することがすごく苦手なこどもだった。もう一度美濃山小学校の児童になって学んでみたい」と言ってくださって、うれしかった。


私は、初任3年を宇治市の小学校で過ごした。
濃密で、忘れられない日々だった。
その後、八幡市に異動したが、こうして、校内研修に呼んでいただく日がくるなんて。
感無量です。
宇治市は、すばらしい先生たちと出会った街。
しみじみと幸せな気持ちで、勤務校に帰る。




研修では、数本スライドショーにしたムービーを持っていく。
BGMには、タテタカコさんや、空気人形のサウンドトラックを使った。
「空気人形」・・・ここにも、闇と光、そして風と水が描かれている。
絶えず、変化し、とどまらない。
いのちのように。人のこころのように。