無花果の日


祖母の七回忌の法要。
久々に般若心経をあげる。
息が続かない。
和尚さんの声はいろんな意味ですごい。


いつもにぎやかな伯父。
今は無花果とポイズンベリーを育てることに夢中らしく、ずっとその話をしてくる。
とても甘い品種の無花果を育てているのだと。



法要後、母がティータイム用にと予約していた季節のタルトを受け取りにいくと、
なんと偶然にも無花果のタルト。


夕食会をしたすてきなお店で出てきたお料理のひとつは、無花果の甘酢がけ。


今日は、見事な無花果の日だね、と笑う。



無花果
子どもの頃は、その独特のべたつきとグロテスクな見た目を好きになれなかった。
今日、あらためて、不思議な姿をしていると、じっくり見る。
無花果
漢字で書いたときの佇まいがいい。
少し物足りない甘さと、落ち着かない食感に今はひかれる。
そして、その姿にも。
真っ赤な赤よりも、色っぽい赤みだと思う。



すすき道、栗、鈴生りに実った柿、新米、星空・・・田舎の秋。



祖母が亡くなったという連絡を受けたのは、授業中だった。
急いで支度をして、1月の雪舞う道、車を走らせた。
道中は、ヒューや野村さん、林さんと2009年1月にワークショップとコンサートを企画したとき、ヒューが私にくれたアルバムをずっと聴いていた。
ヒューがつくったピアノ曲が入っていて、それらはとても、とても、とても悲しい曲だった。
そして、私の行き場のない感情にそれ以上のことはできないというように寄り添い、家までたどり着くことを助けた。
あの日からもうすぐ6年。