不確かなはじまり

新月の夜道。
ひとつ手前のバス停で降りた。
新しいことを、何も始められなかったから、歩きながら踊ろうかと思った。
54本の水性ペンと付箋の入ったビニール袋を、
今日のワークショップのペットボトル振り子のようにぐるんぐるんと振ってみた。
歌いながら、くるくる回ってみた。
そして、息を吐いた。
月明かりのない、白い雲ばかりぼんやりと明るい、空に。
秋の夜風は肌寒いほどで、
私は、このくらいの心地を愛していると感じた。


秋は、いい匂いに満ちている。
実る稲の甘い香り。
金木犀の切ない香り。
家庭の食卓からこぼれる匂いも、香ばしく。
朝の、少し煙たいような匂いも、
夕方の、澄み渡る匂いも、
全部、私をおだやかに、幸せにする。


今日は、行きも帰りも、ゆーみんを口ずさむ。
秋になったら、そんな気分ね。毎年。



昨日、子どものサッカー大会の引率で1日日向にいたら、
夕方から頭が痛く。
ここ数年、すぐに熱中症っぽくなる。
お日様にあたりすぎて眠く、
夕方からお布団に入ると、夜中まで目が覚めず。
skype meetingを一件、すっぽかしました。
ごめんなさい。

そのまま眠り続けて、朝。



新月、そして、部分日食。日本では見られないそうだ。
むしゃむしゃと、月が太陽を、食う。



とくべつなはじまりの日。
まだ、何が始まっているか、わからぬほどの、不確かな。
今日という日を選んで、大切な仕事を、ひとつ終える。



17年前の私にとって、今日という日は特別だった。
そんなことも、PCの日付表示を見ながらぼんやりと思い出す。
今となっては、こころを動かすこともない、遠い記憶。


その残酷さと、安堵と。


そろそろ、止まったままの時計の電池を変えようかな。
5連休には、部屋も片付けよう。