Sounds of SATIE

冬の真ん中なのに、今朝、ふっと初夏を思った。

一番好きな季節は秋。
でも、好きな時期は、初夏。


「デューク」(江國香織)に出て来る男の子も初夏が好きなんだよ。
「初夏」という響きも好き。
きっぱりしてて。


思い出す、テスト前。徹夜明けの朝。
露に濡れた夏草が朝日を浴びる光景を見た。
その輝きに似た新鮮さ。
それが初夏。
どこまでも、はじまりの匂いがする。


初夏の歌、といえば、Coccoの"SATIE"。
中学3年の時から高校、大学にかけて、一番聴いていたのが、Coccoだと思う。


春休みにアルバム『クムイウタ』を従姉妹のあっこちゃんに買ってもらってさ、ずっとずっと聴いてた。

Coccoの歌を聴くと、景色が鮮明に浮かぶのは、思春期の記憶とつながっているからなのかな。それとも、誰でもそうなのかな。

その温度とか、匂いとか、肌寒さとか、太陽の光の加減とか、
息の白さとか、雨の強さまで思い浮かぶ。
Coccoの記憶を私が知っているように、絵が。
でもその絵は、私の知っている景色で。

歌が私を記憶している。


Coccoの歌でたくさん好きな歌はあるけど、一番好きなのが、"SATIE"だった。
わたしは基本的にS soundが好きなのでSATIEの歌詞にとても惹かれる。
タイトルだけじゃなくて、歌詞にも、いっぱいS soundが美しく散りばめられているのだ。

"silent night"
"summer steps"
"silver moon wet with rain"

きれいな言葉。

"SATIE
SATIE
Sounds of SATIE"

サティって、何だろう。
色々、想像したな。

"south wind"
"acerola tears"

アセロラの涙。
アセロラ、大好き。
ねえ、どうして、泣くの。

"summer lies"

そして

"summer smells" 

「夏の匂い」
大好きな言葉。
これは、昔の携帯アドレスにしてたな。
そういえば、今のアドレス hale hilehoも、Coccoの歌の名前。

高校生の頃は、何度も親とケンカして家出をした。
どこにも行く所なんかないから、
公演のベンチで寝たり、
犬の散歩道の途中の街灯の下にうずくまったり。

蛙の合唱が響く初夏の夜。
夜の暗闇や星空、そして歌が味方だった。

夏の夜には、今でもSATIEが響く。

その時々に離れ、去っていくものと一緒に。



研修会の後のコーヒーショップ。
「夏がじゃまをして」というのが、今日の名言だったけれど、わたしのじゃまをしたのは、夏ではなくて、夏の匂いだった。
ううん、じゃまなんかじゃなくて、本当は救い。


季節は初夏。
どうしようもなかった日。
くちなしの咲く小道を歩いた。
甘い匂いのたちこめる鴨川沿いの道。
希望をどんなふうに描けばいいかわからずに。



今日は、即興表現の研修会で、それは、もう、大変におもしろかった。
高尾さんの言葉ひとつひとつには、おだやかだけれど、心揺さぶる狂気があって、聞き逃せない。
この人は、ずっと、問いを立て続け、その答えを発見し続けようとしている人なんだなって思う。それが、はしばしから伝わってくる。

歌島さんの即興音楽ワークは、とてもステキだった。
音楽は毎日聴いている。それは、音楽を聴く身体。味わう身体。

今日のは、音楽を創る身体。音楽に向かう身体。それは、また別の感覚だとあらためて思った。


ピアノの黒鍵だけを十数名で弾いてできた曲があまりにも美しくって、その音の波の中で、びっくりしてしまった。

最後、共同即興で創った「あかり」の歌も、とてもすてきだった。

「すべての芸術は音楽の状態にあこがれる」(ウォルター・ペイター)の言葉を思い出す。

即興音楽、やっぱりおもしろいです。
楽譜を演奏するのもおもしろいけど、なんていうか、意識をとぎすませて、没頭できるのがおもしろい。

それは、先日の、磁石の実験に夢中になる子どもの実験する姿そのものが、ダンスであるという、ダンサーさんの言葉と通じるな、と思う。

まだまだ、書ききれない1日だった。

明日は、美術館にクラスの子の作品を観に。
それから、同僚のピアノコンサート。
3月上旬並みの温かさだとか。
明日は、春を思うかな。