2006年の雨の街

 引き続き、雨の話。

 思い出すのは、荒井由美の「雨の街を」。2006年の春から梅雨の時期によく聴いていました。

 

 教師になって初めての梅雨のシーズン。

 五月病をひきずり、6月は更にしんどくかった。

 学校に着く最後の交差点があって、そこを右折すると学校に着くのですが、幾度となく、この道を曲がらずにまっすぐ行きたいと思いました。

 職場には、ほとんど同年代の教師はいなくて、数少ない歳の近い方と、槇島の喫茶店にケーキを食べに行ったことを覚えています。学校のいろんな事情とか、子どものこととか、思っていること色々話せて、心が少し軽くなったな。あの日も、雨が降っていました。荒井由美の声が流れる車のフロントガラスが雨に濡れてる映像が蘇ります。

 一人暮らしのアパートの裏手は、木津川の堤防。歌詞のように、“どこまでも遠いところへ歩いていけそう”という気分にぴったりでした。

 その頃、大学から続けていたダンススタジオに、毎週土曜日は通っていました。兵庫にあったので、片道2時間半。夜の練習を終えて帰る頃には、くたくたで、その車中でも、Ann Sallyや、荒井由美を聴いてました。

 6月の終わりには、留学時代の友人やすくんがやってきました。宇治の駅で会って、中村藤吉カフェでお茶をしました。座ったのは、テラス席で、やすくんは、相変わらず情熱的で、でも、私は、留学時代の教育へのまっすぐな想いが持てなくて、少し居心地が悪かった。そのときも雨が降っていました。庭の紫陽花がきれいだった。
 
 そうして、7月。

 久御山のde najaというヨーロッパのアンティークの家具を扱っているお店を見つけました。そして、そこで時計を買った。まるっこい、茶色と白を基調にしたレトロな時計。秒針は赤い。今でも使っている時計です。

 その時計に出会った頃から、世界が晴れ始めた。

 夏休みはきらきらしていて、子どもたちはかわいくて、夏の終わりには、学校が楽しみになっていた。初任者研修はいろんな出会いがあり、それなりに充実していたし、糸井先生と本当の意味で出会ったのも夏休みだった。留学時代の友達との同窓会で丹後の海に行ったり、エリカやリキという旅仲間に再会したり…中学の思い出深いクラスの同窓会もあった。9月を前にして、担任していた子ども一人ひとりに写真入りの残暑見舞いを作って、配達して回った。9月にいきなり会うのが怖くて、子どもの顔を見て、安心したかった。

 一面の青空の記憶ばかり。2006年の夏。

 気付けば雨はやんでいました。

 でも、今でも思い出します。教員になって初めての梅雨の景色。

 やまない雨はない。

 雨の降る景色の前に立ち尽くしてみないと感じられないことがある。

 私の好きな小説家の江國香織さんは、雨が好きで、雨が降ると雨をよく見るそうです。

 『いくつもの週末』の中の「雨」というエッセイに、雨の日のエピソードが書かれています。

 

いくつもの週末 (集英社文庫)

いくつもの週末 (集英社文庫)

 今年は、どんな雨の記憶が残るだろう。