女優とカメラマン

 Hちゃんは、よくすねます。いっぱいわがままもいいます。ごっつい乱暴な言葉をつかって、ケンカをしたり、捨て台詞を吐いたりします。

 それがね〜、ほんまに、ドラマの一場面のように、表情豊かなんです。

 なんと、彼女の夢は、女優です。もう、もってこいだと思います。毎日、感心してますもん。本人は、ぼーぼー泣いてたりするんですが、私は、その泣きっ面も、美しすぎて、みとれてしまったり、おもしろくて笑ったりしてしまいます。

 Hちゃんの、すねるところも、わがままなところも、好きやわ〜。

 私が映画監督なら、カメラを回したくなります。女優Hちゃんを主人公としたノンフィクション。教育者としては、どうなん?と、つっこまれそうですが…。

 戦場カメラマンのことを思い出します。

 昔、戦場カメラマンになりたいと思ったことがありました。一枚の写真に、心打たれたからです。

 たしか、中学3年の冬に見た新聞記事です。感動しすぎて、切り抜いて、ずっと大事に持っていました。

 もしかすると、私は、教師になって、子どもをどうこうしたいというよりも、人間の存在そのもの、人生そのものに、すっごく魅かれていて、そのおもしろさ、美しさ、醜さを感じたい!子どもにも感じてほしい!と、すっごく思っているから、この職業についたのかもしれません。

 戦場のカメラマンが、命からがら逃げる場面を、それまた命がけで撮った写真を見たことがあります。

 それに対して、写真を撮るより、助けるべきではないのか、などの声もあります。

 でも、その1枚の写真が伝えられるもの、残せるメッセージというのは、はかりしれません。その人達を、直接的には、救えなくても、もっと大きく、未来に開かれた救済が、可能になる、それが表現行為の持つ魅力であり、使命だと思います。

 さてさて、そのHちゃんが、放課後、教室にとことこやってきました。

 そして、聞きました。

 「せんせい、せんせいのすきなかん字ってなに〜?」

 「う〜ん、なんやろな〜」

 「Hなあ、“休”やで〜。だって、ゆっくり、めちゃめちゃ休めるもん!」

  ははは。いいねえ。子どもも、ゆっくりしたいのですね。
 
  Hちゃんが帰ってから、考えてみました。好きなかん字・・・なんだろう。
 
  ぱっと思いつかないのですが、好んで使っているのは、『雑』という字です。

 雑草、雑想、雑然…ごちゃごちゃしたものがすきなのでね〜。なんか、自分らしい気がするんです。
 
 ☆☆☆
  

 今日は、ほんまにポカポカ陽気でした。

 授業中に、気付くと、Kくんがいなくなっていました。窓際で、ベランダへの戸に一番近いので、そっと出て行ったのでしょう。

 給食のときに、さっき何してたん?と聞くと、「お外で、きゅうしょくたべたかった…」と、困ったような顔で言いました。どうやら、日向ぼっこをしていたらしい。その困った顔をみるのが、せつなすぎる。

 私も外で給食を食べたいです。こんなにポカポカ陽気なのに、教室にいたくない!

 日々、子どもの感性をうけとめつつ、守るべきもをどうやって築いていくのか、悩みながら、もがきながら…の毎日です。は〜、今日も反省点多し。
 
 さて、昨日、図工の時間に、粘土で遊びました。

 もう、私が何を話す隙もなく、好き勝手なグループを組んで、好みの場所で、好きなポーズで、粘土をこね出していました。図工って、そういうことができて、また、そういう状態が理想的なことが、いいです。一番好きな教科が図工です。多分、私も子どもも。


Mちゃんが作っていた顔。私の顔らしい。はじらいながら、教えてくれる。粘土箱の中に、顔を作ってしまうというのが、何とも新しくて、いいです。ありがとう!

 Tたんも、せっせせっせと、私の顔を作っていました。彼女は、私のことを「めいちゃん」と呼ぶ人です。めがねがインパクト大!

 完成図。きゃ〜!かわいい!もう、うれしすぎでしょう!ほんまに、片付けが残念で、残念で・・・。写真をとりまくりました。

 他にも、一風変わったSちゃんは、入れ歯や埴輪を作っていました。作るものが、リアル、かつシュールすぎます。

 Yくんと、Tくんの2人の男の子は、おっぱいを一生懸命作っていました(笑)ケタケタ笑いながら。幸せそうやな〜。

 Sくんは、五重塔を作っていました。眼差しが、建築家でした。

 パシャパシャパシャ。

 いい表情の写真がいっぱい。
 
 そういう時間をいっぱい過ごしたいものです。

 教師に必要な能力は、あえていうなら、写真撮影の技術かしらね〜。

 いいカメラがほしくなります〜。あと、ボイスレコーダー

 私は何になりたいんだ?