信頼

明日から韓国。
ああ、スーツケースがない、と思って、飲み会の後、眠い目をこすりながら2時間かけて実家に帰る。


闇夜にカーステレオから流れる音楽を聴きながら、誰もいない高速道路を走る。
音楽を信頼できるのは、音楽を響かせているのが自分自身だからなんだろうな、と思いながら、走る。



持って帰るつもりだった大きなスーツケースをじっと見て、なんだか君じゃない、と思う。
そして、小さな黒のスーツケースを持って行くことにした。
21歳の時、アメリカ国内を旅行するために近所のウォルマートで買ったこぶりのスーツケース。
君がいい。
本当は、「トランペットのケースかヴァイオリンのケースをトランク代わりにして、出発したい」気分なんだけど。
軽やかに、飛ぶように。
からだはがっちりとこの世につなぎとめられて、身動きもとれないほどだ。



久々の海外。
2012年の秋以来。



旅に出る時に、思い出すエッセイ。
江國香織さんの『とるにたらないものもの』の中の「旅行鞄」。


このエッセイ集は、2006年の夏、東京への旅の前に本屋さんで買ったのだ。

とるにたらないものもの (集英社文庫)

とるにたらないものもの (集英社文庫)

冒頭の一文。「旅が好きな理由の一つに、旅行鞄がある。旅行鞄は、物事をわかりやすくしてくれる。私が生活するのに何が必要か、残酷なまでにはっきりわかる。」

そして、最後の一文。「一つずつ明らかになっていく。遠い場所で、誰を思いだし、誰の夢をみて眠るのかも。」


こういうふうに、旅してみたい。



今回の旅のお供。

過去は死なない――メディア・記憶・歴史 (岩波現代文庫)

過去は死なない――メディア・記憶・歴史 (岩波現代文庫)

泥流地帯 (新潮文庫)

泥流地帯 (新潮文庫)

いってきます。
帰ってきたら、新年度。
どんなに、先に進めないような気分だったとしても、季節は通り過ぎていく。