Alfieを聴いた夜

 新大阪へ。
 コアプラスが新しく創っているコミュニティ・スペースの片付けなどを手伝いに。
 手嶌葵のクリスマスソングのアルバムやらをかけつつ、夢中で作業。
 ペンキを塗ったり、ゴミを片付けたり。
 最初は一人だったけど、一人増え、またもう一人増え、さらに増え…
 最後は5人で作業。
 一人では途方にくれることも、どんどん形を帯びて、整っていく心地よさ。
 夕方には、広く、あたたかく、明るくなったスペースで、思わず踊ってしまった。

たくさんの人が、ゆるやかに、あるいは熱心に関わりながら、ひとつの場所が生まれようとしている。
 その場面に、短くも立ち会えることは幸せ。

 
 “Alfie” という曲。
 いつ初めて耳にしたのかはわからないけど、大好きな曲。
 

 二十歳の夏の終り、高校時代の友人たちと初めて沖縄に旅した。
 安くて居心地よく、スタッフのおじちゃんがステキな民宿に泊まった。
 

 夜は、その民宿の屋上でバーベキュー。初めて泡盛を飲み、酔っぱらった。
 空は星がきれいで、時々、スコールが降るけど、おじちゃんは、「シャワーだ」と言って、構わず気持ちよく食べ、飲み続けるので、私たちもそうした。
 泊まり客のこれまたすてきな兄さんが持ってきたいいスピーカーで、兄さんのPCから、たくさんの粋な音楽が流れてきた。わたしたちは、その音楽にのって踊った。高校時代の友人の前で踊ったのも、それが初めてで、彼女たちは私が踊ることに驚いた。
 そして、会って1日しか経たないおじちゃんに、私は父親との間にある葛藤を話した。
 おじちゃんは、自分の大事な話をたくさんしてくれた。そして、「誰かの目ではなく、自分の目で、お父さんのことを見てみることだ。」と言ってくれた。
 沖縄への出発前に、私は2度目の交通事故を起こして、相当に落ち込んでした。とても沖縄へ行く気分になれなかったのだけれど、それでも生きてきたことを祝福されるような、すばらしい夜だった。酔っぱらい、踊り疲れた身体を、解放という言葉の意味が、じんわりとたしかに伝わっていった。
 

 その夜、みんなが屋上でそれぞれの場所で寝静まった時に、ふと起きた私の耳に聴こえてきた曲が、“Alfie”だった。その音楽は、永遠のように、ゆっくりと沖縄の夜空の下を流れていった。
 今でも鮮やかに残る美しい音楽の記憶。曲を聴く度に、二度と存在しない光景が浮かび上がってくるのは、幸福なことだと思う。