時計

髪を切った。
久々の、ショート。
髪の毛が短くなるだけで、自由を手にいれたように思える。
ほんの少しの間だけ、私は勇敢になれる。
右の耳にだけイヤリングをする。
短い髪に片方だけつけるイヤリングは、
自由の象徴なのだ。
私にとっては。




小さな軋みが、あっという間に身体を占拠し、
電車の外の景色すら見えなくしてしまう。


そういうものと戦わないために、
住む場所を変えたり、
情報を絞ったりする。


会うはずのなかった人と会い、
行くはずのなかったところへ行き、
知るはずもなかったことを知る。

しかし、それは、
会うはずで、行くはずで、知るはずだったこと。


振り返っても、そこには変わらぬ過去しかなく、
目をこらして前を見ても、
今は不安とかすかな希望しか見えない。



数ヶ月止まったままだった部屋の時計の電池を、やっと変える。
なんで、電池1つを変えるのに、こんなに時間がかかるのか。
自分で自分にためいきをつきたくなる。
でも、とにかく、動き出した。
私の部屋に、時間が戻ってきた。



上弦の月
お月様。
今日はあなたが遠かった。